2011年01月18日

貯蓄に保険を活用する3つのリスク。貯蓄と保障は分けて考えるべき

田中香津奈さんの「晴れた日に傘を買うひとはお金が貯まる」という本を読みました。著者は保険に強いファイナンシャルプランナーということで、保険を活用して生活を設計する方法について解説されています。しかし、副題にあるように「リスクゼロで確実に増やす」と断言するのは間違いではないか。また、そもそも保険で老後資金を用意することには大きなリスクがあるのではないか。

「長割り終身」は本当にリスクゼロでお金を増やせるか?

「晴れた日に~」の中では、東京海上日動あんしん生命の「長割り終身」という終身保険を利用して老後に備えることを提案しています。「長割り終身」というのは、保険料を払い込んでいる間の解約返戻金を低くおさえることで、保険料を引き下げようというものです。

解約返戻金というのは、保険を途中で解約したときに保険会社が払い戻すお金のことです。終身保険などは貯蓄性を兼ね備えているため、解約したときはあらかじめ定められた割合のお金が戻ってきます。

「長割り終身」という商品の場合、30歳・男性が1,000万円の保険金額で60歳まで保険料を払い込む場合、月々の保険料は17,560円。終身保険なのでいつ死亡しても1,000万円を受け取れます。また、60歳以降に解約した場合は、払い込んだ保険料以上の解約返戻金が保証されています。60歳時点で解約したとすれば、払い込んだ保険料の総額は632万円ですが、解約返戻金として732万円を受け取れる計算です(http://www.tmn-anshin.co.jp/kojin/goods_shibou/nagawari/)。

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貯蓄に保険を使う3つのリスク

この商品のどこにリスクがあるのか?

まず、途中で解約をすると損をするところです。たとえば、「病気で働けなくなった」「会社が急に倒産した」といったトラブルがあってお金が必要になったとします。しかし、上の例では60歳までに長割り終身を解約すると、払い込んだお金よりも少ないお金しか戻ってきません。そうなると、「解約しないで消費者金融で借りてなんとかしよう」といった考えになる恐れがあります。20年、30年という長い期間に何が起こるかなんて分かりませんよね。また、途中で保険料が払えなくなったら、その時点で解約の扱いになってしまいます。「他でお金を借りて、長割り終身の保険料を払おう」みたいな話になったら目も当てられません。

もし60歳まで無事に保険料を払い続けることができたら、払った保険料よりも大きなお金が戻ってきます。上の例では保険料の115.8%の返戻金です。ところが、この払い戻し金を年利で考えてみると、実は1%に満たないのです。要するに1%未満の低金利で資金を数十年も固定してしまうということです。保険会社は「返戻金の他に配当金も出ますよ」と反論するかもしれませんが、配当金がどれくらい出るのかはまったく当てにはなりません。この商品には「1000万円の生命保険が付いている」という点を割り引いたとしても、もっと有利で確実な運用方法があるはずです。

そして、保険会社が破綻するリスクがあります。要するに保険会社がつぶれてしまうと、もらえるべきお金がもらえなくなる可能性があるということです。まったくお金が戻ってこないわけではなく、最初に約束されていた金額から大きく減ってしまうでしょう。実際に今までいくつもの保険会社が破綻してきました。実際に列挙すると、日産生命、東邦生命、第百生命、大正生命、千代田生命、協栄生命、東京生命、大和生命(これで全部かな?)。

リーマンショックのときは世界最大手のAIG(American International Group)まで経営危機におちいり、AIG系のアリコジャパンの保険を持っていた私は毎日がひやひやものでした。長割り終身と同様に当初の返戻金を低くおさえることで保険料を安くするという商品だったので、真剣に解約すべきかどうか悩みました。世界最大手の保険会社ですら破綻の危険があるわけですよ。そんな保険会社の商品をとりあげて「リスクゼロ」と呼ぶのは、ちょっと違和感をおぼえます。保険会社が破綻するとどうなるかは、こちらの記事をご覧ください(http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20080922/171317/)。

保険はあくまで万が一の事態に対する保障のために使うものであり、貯蓄を主目的として活用すべきではないと思います。いかがでしょうか? 「保険のプロ」のご意見をうかがいたいところです。

晴れた日に傘を買う人はお金が貯まる ‾『守り』のマネー革命‾ 晴れた日に傘を買う人はお金が貯まる ‾『守り』のマネー革命‾
田中 香津奈

扶桑社 2009-11-01

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この記事へのコメント

1. Posted by 佐久間敬   2011年08月24日 19:01
5 定期保険か終身保険かという場合に、保険料の差額を自分で運用したらと思っていましたので、利率の出し方を探していました。エクセルのRATEの使用例が分かりやすく、参考になりました。長割り終身の意見にも、同感です。
これからも、いいブログになることを期待しています。

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