2011年01月29日

FXで資産運用はできない。「スワップ狙い」はナンセンス。FXは為替レートの動きを当てるゲームだ

昨日の続きです。「FXでは貯蓄でないのはもちろん、投資でもない。まさに投機、バクチであって、FXを資産運用に使うのは間違っている」という話でした。

もちろん、FXをしっかり理解してそれを活用している人に対しては、FXをやめろというつもりはありません。しかし、世の中にはFXについて間違ったイメージをいだかせる宣伝が多く、そのイメージをもったまま大事な資産をFXにつぎこむ人もいます。そうした人には、ぜひFXの性質を理解して、資産運用の手段として適切であるかどうかを考え直してほしいと思います。

スワップ金利は「金利」ではない

FXのやりかたで「スワップ狙い」というのがあります。「スワップ金利」と呼ばれることから、「利息のようなもの」と考えている方も多いようですが、それはまったくの間違いです。ここでは「スワップ金利=金利」ではないことを明らかにするため、「スワップポイント」という用語で話を進めていきます。

たとえば、日本円の金利が1%で、米ドルが5%であれば、日本円を売って米ドルを買った人はその差に当たる4%分のスワップポイントを受け取れます。ここ10年くらいは日本の金利水準がきわめて低いため、他の通貨を買う場合はいつもスワップポイントを受け取ることができました。だから、「FXは利息がもらえて得じゃないか。為替手数料の安い外貨預金と同じもの」なんて誤解が生まれてきたのでしょう。

でも、外貨預金であれば必ず利息はもらえるのに対し、FXのスワップポイントではゼロかマイナスになることもあります。日本円も米ドルも同じ3%であればゼロ、もし日本円が3%のままで米ドルが2%に下がれば1%分のスワップポイントを支払わなければなりません。

今は金利が世界的に下がっていますが、もし金利が上がっていくとどうなるか。もし日本円も米ドルも同じ10%になった場合、外貨預金でも円預金でも10%の利息を受け取れるのに対し、FXならスワップポイントはゼロです。

金利平価説ではスワップ狙いは成り立たない

そもそもスワップポイントは何なのか。スワップポイントを理解するには「金利平価説」について知る必要があります。金利平価説とは為替相場は金利によって決まるという考え方です。金利の違いを埋めるように為替相場は自動的に調整されます。

計算を簡単にするために「1ドル=100円」「円は年利1%」「ドルは年利5%」と仮定します。さらに為替手数料は発生せず、金利もずっと変わらないとしましょう。あなたが100万円を持っていたとすればどうするか。円で運用すれば1年後は101万円になります。一方、ドルに換えて運用すると1万500ドルになり、円に戻せば105万円になります。こういう状態なら誰も円で運用しようなんて考えませんね。ドルに換えて運用して後で円に戻せば、リスクなしで確実に利益が出ます。みんな借金してでもドルを買って運用します。

円のまま運用する場合

100万円を1年間運用する
↓ (円は年利1%)
101万円になった

ドルに換えて運用する場合

100万円をドルに換える
↓ (1ドル=100円)
1万ドルを1年間運用する
↓ (ドルは年利5%)
1万500ドルを円に戻す
↓ (1ドル=100円)
105万円になった

でも、実際にはリスクなしで絶対にもうかるなんて話はありません。仮定のどこに問題があったかと言えば、「1ドル=100円」のままレートが変わらないところです。もし1年後に「円高・ドル安」になって、「1ドル=96.18円」になっていれば運用結果はどうなっているか。ドルで運用した1万500ドルを「1ドル=96.18円」で円に戻せば、ちょうど101万円(10,500×96.18)になります。これで円とドルのどちらで運用しても1年後の成績は同じになりました。

ドルに換えて運用する場合2

100万円をドルに換える
↓(1ドル=100万円)
1万ドルを1年間運用する
↓(ドルは年利5%)
1万500ドルを円に戻す
(1ドル=96.18円)
101万円になった

円のまま運用したときと同じ金額になる!

つまり、ドルは円に比べて金利が高いけれども、長期的には円に対してドルの価値が下がるのでバランスがとれるということです。金利平価説が正しいとすれば、外貨預金で金利が高い通貨(たとえばオーストラリアドル)にかえて運用することは意味がありません。せっかく金利が高くていっぱい利息を受け取ったとしても、いずれはその通貨の価値が下がってしまって利息分を打ち消してしまうからです。

スワップポイントは何かという話に戻ります。円を売って金利が高いドルを持ち続ける場合、金利が高いドルの価値が下がってしまいます。そのバランスをとるために、金利が高いドルを買った方がスワップポイントを受け取ります。けっしてボーナスではありません。どちらの通貨を持っていても差が付かないようにスワップポイントを受け渡ししているだけです。これで金利の差による損得はなくなって、純粋に為替レートの上下によって損得が決まるようになります。

だから、「スワップ狙い」なんて意味がないのです。理屈の上では為替レートの動きでスワップポイントは吸収されてしまうはずです。「スワップポイントで年3%の利回りをかせげるから、レバレッジ10倍で年30%」という考え方がいかに危険なものかが分かるはずです(まあ、最近はスワップポイントが小さくて為替レートの動きですぐに吹っ飛ぶことが知られているのでスワップ狙いははやらないようですが)。

FXは為替レートの動きを当てるゲーム

こうした性質があるため、私はFXと投資だとは考えていません。FXは為替レートの上下によって、利益を得る側と損失をこうむる側がきっぱりと分かれます。為替レートがどちらに動くかを当てるゲームと言っていいでしょう(その条件を整えるためにスワップポイントがあります)。FXには投機やバクチという言葉がぴったりです。

ただ、FXで確実にもうける方法がひとつだけあります。それは胴元になることです。FXのサービスを提供する側にまわれば、手数料をかせぐことができます。まあシステム投資が必要ですし競争も激しいので、おいしい商売には見えませんが。

もちろんFXの性質を理解した上でゲームとして参加するのであれば、それはかまわないと思います。レバレッジをきかせた上で予想が当たれば大もうけできるでしょう。しかし、FXに対する知識がない人に対して、FXがあたかも安全な資産運用手段であるかのように見せかけることは限りなく犯罪に近い行為です。

「こつこつ貯めるFX」というサイト(http://zakzak.fx.kachi104.com/)の中で「中長期の投資スタイル」というページがあります。そこには「投資というより貯蓄したい」「月々のお小遣いの足しにしたい」「結婚資金、住宅購入用に」「老後の資金に」なんてキャッチコピーが並んでいますが、これを信じてFXに手を出す人がいないか心配です。「ルーレットで老後の資金を貯めよう」というのと同じくらいナンセンスです。

FXの成功体験をうのみにしてはいけない

「でも、FXでもうけている人が実際にいる」と思われるかもしれません。人間というのは自分の成功体験は大きな声でふれまわるけれど、失敗については口を閉ざすものです。FXで大もうけした人がいる裏には、それ以上にFXで大失敗した人がたくさんいます。雑誌に登場したり本を書いたりしている人は、すべて成功した一握りの人です。こういうのを「生存者バイアス」と言います。

あと、「金利平価説はおかしい」と反論したくなる人も多いはず。日本がゼロ金利を続けていた間は、円キャリートレードによって円安が進んだという事実があります。「だから、トレンドをつかめば大丈夫」という声も聞こえてきます。さらにもっと長いスパンで見れば、「成長力が高い国の通貨は高くなる。そうした国の金利は高いことが多い」みたいな分析もできますね。

そこまで頭が回る方がFXにチャレンジするなら私は何も申し上げません。私が問題視しているのは、悪質な宣伝をうのみにして「FXでも安全に資産運用できるんだ」と誤解してしまう人が多いところ。また、ファイナンシャルプランナーの中にもスワップポイントの意味すら理解することなく、資産運用の手段としてFXをすすめる人がいるところです。

最後にひとつ指摘しておきたいのが「チャートを分析して確実に利益をあげる方法があるのであれば、日本の年金制度が破綻することはないだろう」ということです。日本の未来はバラ色ですね(要するにチャートを見ても為替の動きは分からない)。

「じゃあ、株もバクチなんじゃないの?」という疑問に対しては、日を改めて書きます。FXと株は本質からしてまったく別物です。今日はもう寝ます。長文におつきあいいただき、ありがとうございました。



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