自営業が長期休業に備えるにはどうすればいい? 所得補償保険は本当に役に立つのかフリーランスなら「平均課税」で税金が安くなるかも。税額が半分になることもある

2011年02月24日

自営業やフリーランスの今日から始められる節税対策。10年後には数百万円も貯金を増やせるかも

今日も自営業・フリーランスの生活設計です。税金を安くする方法です。

仕事が忙しくて「節税」なんてことを考えたこともない方が多いんじゃないでしょうか。私もずっと何も考えずに確定申告をして、言われるがままに税金を払っていました。「領収書をこまめに集めて経費を増やすと税金が安くなる」くらいの知識しか持っていなかったので、早くから税金の勉強をしておけば今ごろ貯金の額がぜんぜん違ったんだろうと後悔しています。今から始めると10年後には数百万も貯金の額を増やせる可能性があるのです。

所得控除を大きくすると税金が安くなる

税金を安くするポイントはただ一つ。課税所得を小さくすることです。たぶんこの時期は確定申告書が手元にあるので、それを見ながらだと分かりやすいと思います。

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税金は売り上げ全体にかかるわけではありません(上の申告書の「ア」)。まずは、売り上げから経費を引いて「事業所得」の金額を求めます(申告書の「1」)。領収書を集めて税金を安くするというのは、経費を大きくして事業所得の額を削っているわけです。

次に事業所得から「所得控除」を引きます(申告書の「10」から「24」)。国民年金や国民健康保険の保険料などは安定した生活には必須の費用なので、その分には税金をかけないでおこうということです。つまり、税金を安くするには、「所得控除」の額を大きくすることが重要です。確定申告書に「所得から差し引かれる金額」と赤く書かれている部分です。

最終的に、事業所得から所得控除を引いた額が課税所得になります(申告書の「26」)。

所得税の計算方法を大ざっぱにまとめるとこうなります。

第1段階 売り上げ - 経費 = 事業所得
第2段階 事業所得 - 所得控除 = 課税所得
第3段階 課税所得 × 税率 = 所得税

さらに課税所得の大きさで住民税の額も違ってくるし、地域によっては国民健康保険の保険料も影響を受けます。

なお、これは本業の売り上げしかないときの式です。他に不動産所得があったり、住宅ローンを返済中であったりすると、税金の計算はもっと複雑になります。


所得控除にはどういうものがあるか

所得控除には14の項目が並んでいますが、この中で税金を安くするために注目したいのは次の2つです。

  1. 社会保険料控除
  2. 小規模企業共済等掛金控除

まずは「社会保険料控除」の中には「国民年金の保険料」「国民健康保険(および介護保険)の保険料」「国民年金基金の掛金」などがあります。前の2つはみんな払っているはずなので、3つ目の「国民年金基金」を使うことで税金を安くできます。

国民年金基金は65歳以降にもらえる年金を上積みするものです。払い込んだ掛金に応じて上積みされる額が決まってきます。たとえば、30歳男性の場合、月9,320円の掛金を払い込むことで65歳以降は月2万円の年金を死ぬまで受け取れます。掛金の分だけ税金が安くなるので民間の年金保険に入るよりも絶対にトクですよ。

なお、「年金の保険料を払ってももらえるかどうか分からない。だから保険料を払わずにその分を貯金する」なんて方もいらっしゃいますが、ソントクから考えると自営業者が国民年金に入っていてソンをすることはありません。国民年金と同じ内容の保障を民間の保険商品でカバーしようとすればどれだけの保険料を支払うことになるか。少なくとも年1万数千円という保険料では無理です。

  • 65歳以降は年79万2100円の年金を生涯受け取れる
  • ケガなどで障害を負ったときは年99万0100円(障害の内容によっては年79万2100円)の年金を生涯受け取れる
  • 18歳以下の子どもを残して亡くなったら残された妻や子は遺族年金を受け取れる

小規模企業共済と確定拠出年金

「小規模企業共済等掛金控除」に含まれるのは「小規模企業共済の掛金」「確定拠出年金の掛金」の2つです。

小規模企業共済は自分のための「退職金」の積み立てと考えてかまいません。毎月掛金を支払っておけば、事業をやめて引退するときに積み立てた分を受け取れます。しかも小規模企業共済から受け取ったお金は税制の面でも優遇されていて、掛金を払い込んだ期間が30年であれば1500万円までは税金がかかりません。

しかも、現役の間は掛金の分だけ課税所得が少なくなります。「将来のために貯金をしよう」というのであれば、他の民間金融機関のどんな商品よりも有利だと思います。現在の積み立ての利率は約1.5%に設定されていますが、税金が安くなる分だけ掛金も少なくなると考えれば実質の利率は3%以上になります。ただし、短期で廃業して共済金を受け取ると損をすることもあるので注意してください。

もう一つの確定拠出年金は、国民年金基金と同じく老後の備えのために今から積み立てておくものです。国民年金基金は掛金によって将来受け取れる額が確定していますが、確定拠出年金は掛金を自分の好きな金融商品で運用する仕組みになっていて、どんな金融商品を選択したかで将来的に受け取れる年金の額が変わってきます。国民年金基金は元本保証の安全な積み立てであり、確定拠出年金は元本割れのリスクはあるけれど大きく増える可能性がある積み立てです。

「老後のための資産運用」を考えているのであれば、まずは確定拠出年金から始めるべきです。60歳になるまで引き出しができないという欠点はありますが、運用中は利益に税金はかかりませんし、掛金の分だけ税金が安くなります。要するに同じお金を積み立てるにしても確定拠出年金の方がずっとリターンが良くなるわけです。また、将来的に年金として受け取るときも税金が優遇されています。


税金はどれくらい安くなる

所得控除の対象として「国民年金基金」「小規模企業共済」「確定拠出年金」の3つをあげましたが、これらに加入することでどれくらい税金が安くなるのか。

まずは各制度にいくらまで掛金を支払えるか。それぞれ上限があって、国民年金基金と確定拠出年金は合わせて月6万8000円まで、小規模企業共済は月7万円までと決まっています。上限いっぱいまで掛金を支払うとすれば、月13万8000円、年間で165万6000円となります。要するに最大165万6000円もの課税所得を減らすことが可能になるのです。

  掛金の上限
国民年金基金・確定拠出年金 合わせて月6万8000円
小規模企業共済 月7万円

かりに売り上げが年1000万円で、課税所得が年600万円あったとします。この場合、おさめるべき税金は年137万2500円(所得税は77万2500円、住民税60万円)です。

次に限度いっぱいまで掛金を支払って課税所得を減らした場合、課税所得は年434万4000円となります。この場合の税金は87万5700円(所得税44万1300円、住民税43万4400円)です。

だいたい50万円くらい税金が安くなりました。さらに地域によっては国民健康保険の保険料も安くなります。

現在の税金
課税所得 600万円
税金 137万2500円(所得税は77万2500円、住民税60万円)

節税後の税金
課税所得 434万4000円
税金 87万5700円(所得税44万1300円、住民税43万4400円)

これを10年続けると、軽減される税金は約500万円になります。同時に老後の備えもばっちりできるのです。

税金が安くなるだけでなく、もし残念なことに年金を受け取る前に亡くなったとすれば、遺族は「国民年金基金」「小規模企業共済」「確定拠出年金」で積み立てた分を受け取ることができます。受け取れる額は制度ごとに違ってくる(確定拠出年金は運用成績で決まる)ので正確な金額を出すのは難しいですが、上限いっぱいまで掛金を支払っていたとすれば10年間では1656万円になります。だいたいこれくらいの金額が遺族の手に渡るということで、民間の生命保険に入っているとすればその分だけ保険金の設定を引き下げる余地があります。月数千円は保険料を節約できるでしょう。

まあ月13万8000円の掛金を支払い続けるのは、よほど景気の良い人でないと難しいでしょう。さらに、いくら節税ができるといっても、手元の現金がなくなってしまえば大変です。小規模企業共済は途中で脱退することも可能ですが、そうすると受け取れる額は払い込んだ掛金より少なくなってしまうこともあります。ある程度は手元に余裕資金を残しつつ、なるべく多くの掛金を払うようにするといいでしょう。ちなみに一度設定した掛金も後から減らすことが可能です。

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