2011年02月28日

金融商品でトラブルにまきこまれたら「金融ADR」で解決しよう。数万円の被害でも比較的簡単に解決できます

先週の金曜日、ファイナンシャルプランナーの勉強会に参加しました。テーマは「金融ADR」です。「ADR(Alternative Dispute Resolution)」とは「裁判外紛争解決手続き」と訳され、利害が対立する問題について裁判にたよることなく解決をめざすものです。裁判と比較して次のような特徴があります。

  • 手続きが簡単
  • 迅速な解決
  • 費用が少額
  • 内容は非公開

紛争解決の手段としての裁判はかなりハードルが高く、誰もが気軽に裁判をおこすわけにはいきません。それをおぎなうために日本では「ADR促進法(正式名称は「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」)が2007年に施行されました。裁判を起こすほどではない問題について、第三者が間に立って「仲裁」「調停」「あっせん」をおこないます。

ADRを実施する機関として身近なところでは、国民生活センターや消費生活センターがあります。そして、今回のテーマである金融商品にまつわるADRの受付先としては次のような機関があります。それぞれトラブルの相手によって受付先が違ってきます。

  • 全国銀行協会 相談室
  • 生命保険協会 裁定審査会
  • 日本損害保険協会 そんぽADRセンター
  • 日本商品先物取引協会 相談センター
  • 日本貸金業協会 紛争解決センター
  • 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)

最後の「FINMAC」とは、「日本証券業協会」「投資信託協会」「日本証券投資顧問業協会」「金融先物取引業協会」「日本商品投資販売業協会」が共同で2010年に設立した団体です。株や投資信託、金融先物、FXなどのトラブルはすべてここが窓口になります(http://www.finmac.or.jp/)。

具体的にどういうトラブルがADRの対象になるかをFINMACの公表資料から拾ってみます(http://www.finmac.or.jp/html/tokei/pdf/assen/110131hp.pdf)。確かに裁判をするほどでもないトラブルがまじっていますね。数万円という被害額で裁判を起こすのは非現実的なので、ADRが有力な手段となりそうです。

  • 店頭通貨オプション取引の勧誘に際し、十分な商品説明がなく、リスク及び中途解約手数料を誤認したまま契約を締結したことから損失3,005万円について損害賠償を求める。
  • 担当者の誤った説明により購入した投資信託により被った損害金86万円の賠償を求める。
  • 有価証券CFD取引において、担当者に権利最終日を確認したところ間違った説明を受けたため、本来、買戻しするはずの売建て玉を継続保有してしまい、かつ権利最終日に買建てすることができなかった。本件は、担当者による誤った情報提供に起因するので、発生した配当金支払相当額及び買建てしていれば得られた配当金相当額等62万円の損害賠償を求める。
  • 投資信託の購入に際し、担当者がインターネットで購入した場合にはキャッシュバックキャンペーンの対象になる旨を説明しなかったことから、本件投資信託を店頭で購入した。キャッシュバックキャンペーンの説明を受けていれば、インターネットを経由して購入していたので、本来、キャッシュバックされるべき金額2万円の損害賠償を求める。
  • 高齢かつ耳の聞こえにくい申立人に対し、リスク等を十分理解させないまま、担当者は電話により連日のように株式売買を行わせたことにより生じた損害金2660万円の賠償を求める。
  • 株式投資信託の取引において、担当者主導で短期乗換えを複数回行ったところ、多額の損失を被った。このように担当者主導で投資信託の短期乗換えを繰り返すことは、投資アドバイザーとして不適切な行為であるので、当該売買で生じた損害金等487万円の賠償を求める。
  • 2万株の売却注文を出したにもかかわらず、担当者のミスで2千株しか売却できなかった。失念した分の損害金3万円を請求する。
  • 担当者は、申立人の承諾を得ることなく無断で株式を売却した。したがって、無断売買により売却された株式を原状回復するための損害金相当額14万円の損害賠償を求める。

ADRを利用する方法としては機関ごとに細かな違いがあるようですが、銀行が相手のトラブルでは次のようなステップをたどるらしいです(http://www.zenginkyo.or.jp/adr/mediation/flow/)。

全国銀行協会 相談室に相談する。
↓ 納得できない場合
あっせん委員会にあっせんの申し立て
↓ 申し立てが受理された場合
あっせん手続きの開始
・主張書面や資料などの提出
・事情聴取に出席

あっせん委員会があっせん案を提示
↓ あっせん案を受け入れる場合
あっせん成立。和解契約書の作成

全銀協の場合、あっせんの申し立てをしても、あっせん委員会が「こりゃどうみてもおかしい」と判断したときは申し立てが受理されません。その場合はあきらめて泣き寝入りをするか、裁判を提起することになります(しかし、あっせん委員会が受理しないような案件では裁判を起こしても勝つのは難しいでしょう)。また、あっせん案は双方が拒否することもでき、その場合もとことんまで戦うなら裁判に移行することになります。

勉強会では実際にADRを利用された方の体験談を聞くことができました。ADRには守秘義務があるために細かいところまで聞くことはできませんでしたが、裁判よりは簡単とは言ってもハードルは意外に高いようです。申立書や答弁書を作成したり、それをおぎなう資料を集めたり、あっせん委員や関係者が10人以上もいるところに引き出されて事情を根掘り葉掘り聞かれたり。解決までの期間は短いかもしれないけど、精神的な負担は裁判とあまり違いがなさそう。

かりにADRのハードルが高いとしても、金融商品のトラブルにまきこまれたときは、ぜひADRの窓口に問い合わせてみることをおすすめします。勉強会で金融機関におつとめの当事者からうかがったことですが、「あきらかに自分(金融機関)が間違っていると思うことでも、自分からは誤りを認めることができない。顧客の方からADRに申し立てをしてもらって第三者が間に入ってもらった方が実はうれしい。でも、自分からADRを紹介することもできない」という内輪の事情もあるようです。まあ、それ以前にトラブルにまきこまれないように気を付けるのが一番なんですけどね。

ちなみにファイナンシャルプランナーは代理人として申し立てをおこしたりすることはできないので、もし私に相談をいただいても受付先の紹介しかできません。ADRの実施期間では申立書のひな形なども提供しているみたいなのでご自分でも手続きができると思いますが、もし自力でできないときは弁護士などに依頼してください。



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