2011年03月24日
個人事業主が会社を作るとなぜ税金が安くなるのか?
個人事業主(自営業やフリーランスなど)は収入がある程度多くなると会社にした方が税金が安くなると言われます。なぜそうなるのか。私も実際に会社を作るまでよく分からなかったので、仕組みを簡単に説明してみます。
下の図を見て分かるとおり、個人より会社の方が売り上げの中で税金がかからない部分が大きいのです。図の赤い部分に対して税金がかかるのですが、同じ売り上げであっても会社に切り替えた方が赤い部分が小さくなっていることが一目で分かります。
個人の場合、売り上げから経費を引いた額が個人の所得となり、ここに「所得税」「住民税」がかかってきます。実際には所得全体に税がかかるのではなく、年金保険料などの「所得控除」を引いた部分に税金が発生します。
一方、会社の場合、会社から経営者(要するに自分)に支払う給料も会社にとっては経費となります。売り上げから経費(通常の経費+給料)を引いた部分が会社の所得であり、この所得に対して「法人税」がかかります。
これとは別に、経営者の給料に「所得税」「住民税」がかかりますが、ここが重要なところで「給料の税金は低く押さえられている」のです。給料の全体に税金がかかるのではなく、「給与所得控除」を引いた額に対して税金がかかるためです。さらに所得が大きいほど所得税の税率は高いため、給与所得控除によって税率が低くなる可能性もあります。給与所得控除についてはこちらのページ(http://moneylab.ldblog.jp/archives/51629118.html)もぜひごらんください。
税金が数十万円も安くなることも
イメージをつかむためにざっくりと計算してみましょう。独身の個人事業主が一人で会社を作ると税金がどう変わるかをシミュレーションしてみます。実は売り上げや業種によっては「事業税」「消費税」がかかりますし、所得税と住民税では所得控除の額が違ってきます。他にも青色申告と白色申告の違いだとか、社会保険料の負担も変わってきたりするので、あまり細かいところは突っ込まないでください。
前提条件は次のとおりです。
売上 700万円
経費 200万円
所得控除 150万円
個人では62万2500円(所得税と住民税)なのに対し、会社だと36万4500円(所得税と住民税、法人税)ですむ計算になります。上の図を見ると分かるように、給与所得控除がかなり大きなウエイトを占めていますね。個人から会社に切り替えるだけで給与所得控除の分だけ課税対象が少なくなると考えてもかまいません。もし個人で100万円以上も経費を増やそうとすると大変ですね。
個人で課税所得が350万円なら所得税の税率は20%です。しかし、会社にして給与所得控除の恩恵を受けて所得が196万円に減れば税率は10%に下がります。これで税金の額がかなり少なくなるわけです。
売り上げが少ないと会社にするメリットはない
法人税の扱いですが、上の例では法人税をなるべく少なくするために、会社の所得をゼロにしています。本来は所得に対して法人税が決まるのですが、東京都では法人住民税の均等割として7万円がかかります。ちなみに会社に所得が発生したときは、その所得に対して25%くらいの税金がかかります(所得の大きさなどで税率は変わるので正確に何%とは言えない)。
法人税には均等割があるので、もともとの売り上げが小さいときは個人の方が税金が安くなることもあり得ます。また、税金の種類ごとに税率が異なっているので、給料の設定を間違えるとムダな税金を支払わなければなりません。他にも税理士に経理をお願いするときはその費用も発生します。あれこれ考えると、個人事業主としての事業所得(売り上げから経費を引いた額)が最低でも500万円はないと会社にするメリットはないと思います。
ちなみに節税の面からベストなのは、売り上げから経費(給料を含む)を引くと、会社がちょっと赤字になるように給料の額を調整することです。私の会社は創業してからずっと赤字続きです。うまく赤字にするのも実は大変で、原則として年度の途中で給料を上げることはできません。最初の予想よりも売り上げが大きかったからといって、給料を増やして赤字にすることはできないのです。年度の変わり目には、何日もかけてエクセルでシミュレーションしながら来年の給料の額を決めます。
今回は大ざっぱな枠組みしか紹介していませんが、実は会社にすることでさまざまな節税のテクニックが使えるようになります。家族を役員や従業員にして所得を分散させたり、生命保険の掛金を会社の経費にできたり、書店にいけば節税の本がいっぱい見つかるはずです。
もちろんデメリットもいろいろあるので、節税だけを目的に会社を作るのはどうかと思います。しかし、個人事業主の方もこうした税金のカラクリだけは知っておいて損はないはずです。
(注意)上のシミュレーションは2011年3月現在の税制に基づいています。税制の変更によって節税の効果が得られなくなる可能性もあります。たとえば、過去には「同族会社では、役員に対する給与を会社の経費として認めない」という制度もありました(http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5207.htm)。
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