2012年01月29日

住宅ローンの繰り上げ返済で「返済期間短縮型」を選ぶべきではない2つの理由

住宅ローンの繰り上げ返済には「返済額軽減型」と「返済期間短縮型」の2つがあり、どちらか選択できるようにしている金融機関が多い。実際に繰り上げ返済をするときはどちらを選ぶか大いに迷うわけだが、「利息の軽減効果が大きい返済期間短縮型がおすすめ」というアドバイスをよく聞く。たとえば、こちらのサイトだ(http://finance.yahoo.co.jp/sonybank/vol5/page02.html)。

しかし、利息軽減額の大きさに着目して返済期間短縮型を選択するのは間違っているのではないかと思う。少なくともファイナンシャルプランナーがこのような論理で返済期間短縮型をすすめるのは利用者をミスリードする可能性が高い。その理由は2つある。

返済額が減った分をすべて繰り上げ返済に回せば軽減される利息の額は同じになる

まず、必ずしも返済期間短縮型の方が利息の軽減額が大きいとは言い切れない。繰り上げ返済の手数料がかからず、1円単位で繰り上げ返済ができる住宅ローンがあったとしよう。返済額軽減型で繰り上げ返済をした人が、返済額が減った分をすべて翌月の繰り上げ返済にまわしたとする。これを毎月繰り返していくと、返済期間短縮型を選んだときと同じペースで借入残高が減っていく。そして、最終的には返済期間短縮型と同じ期間で返済が終わり、利息の支払額も同じになる。

毎月繰り上げ返済をするのが面倒なら、軽減分を貯金しておいて1年単位で繰り上げ返済してもいい。利息の支払額はちょっと多くなるけれど、何十万円もの差が生じることはないはずだ。「返済期間短縮型の方が利息軽減効果が大きい」というのは、繰り上げ返済のチャンスが1度しかないときであり、何十年という返済期間の中で何度も繰り上げ返済のチャンスがある場合は話が違ってくる。

むしろ返済額の軽減分を「住宅ローンの返済にまわすか」「生活費など他の目的に利用するか」を自由に選択できる分だけ返済額軽減型の方が有利だと言える。そのときの状況によって機動的に動けるわけだ。手数料ゼロで1円単位の繰り上げ返済ができる住宅ローンであれば、返済期間短縮型を選ぶ理由が見つからない。

定年までの完済にこだわらず、滞納を防ぐことを最優先に考えるべき

もう一つの理由は、住宅ローン返済における最大のリスクを見誤っているところだ。「定年前に住宅ローンを完済しよう」と言葉を聞けば、返済期間を短縮する方が正しいように思える。だが、住宅ローンでもっとも怖いのは途中で返済ができなくなることだ。たいていの銀行は3カ月も滞納すれば何らかの対応を求め、支払いのめどが立たなければ任意売却などを提案してくるだろう。そして、住む家を失うだけでなく、借入残高によっては住宅ローンが残ることもありうる。

たとえ現在は家計に余裕があったとしても、何十年も先に住宅ローンを完済するまで一度の滞納もあってはならない。繰り上げ返済の資金があるなら、たとえ数千円であっても毎月の返済額を減らすために使う方が安心だと思う。ならば返済期間短縮型ではなく、返済額軽減型を選ぶのが正解だ。今は順調に返済できていても、これから給料が減ったり、病気になったり、何が起きるかは分からない。

もちろん返済が苦しくなったときは、銀行も返済期間の延長などの条件見直し、一定期間は元本の返済を猶予する(金利分のみ返済する)など、何らかの対応をしてくれることだろう。だが、確実に銀行側が対応してくれるかは分からないし、もし対応してくれるとしても面倒な交渉が待っている。住宅ローンに限らず、借金というものは返済期間の短縮は簡単にできても、反対に返済期間をのばすのは難しい。だから、繰り上げ返済においても、返済期間短縮型を選択して、わざわざ自分から将来のオプションを狭めることはない。

「定年前に住宅ローンを完済しよう」という言葉にもしばられない方がいい。確かに住宅ローンを早めに完済することが望ましい。だが、定年後に借り入れ残高がある程度残っていても、毎月の返済額が少なくなっていれば深刻な問題にはならないだろう。だいたい持ち家でなく、賃貸の人は定年後も家賃を払い続けているのだ。なぜ持ち家でだけ定年というラインを引くのか。あらかじめ繰り上げ返済によって、毎月の返済を家賃に満たない額まで減らしておけば、定年までに完済しなくてもかまわないと思う。反対に定年までの完済にこだわって、貯蓄を減らす方がずっとあぶない。

なるべく長期間で借りて、返済額軽減型で繰り上げ返済する

繰り上げ返済に限らず、住宅ローンの返済計画において支払利息の総額を前面に出して議論をすると選択を誤る可能性が高い。たとえば、最初に住宅ローンを借りるとき、利息の総支払額を減らすために短い期間で住宅ローンを組もうという力がはたらき、無理な返済計画を組む危険性がある。

年齢制限に引っかからないのであれば最長の35年で借り入れて、余裕があるなら繰り上げ返済で借入残高を減らしていけばいい。繰り上げ返済では自分の手足を縛ることになる返済期間短縮型ではなく、返済額軽減型の方が滞納のリスクを小さくすることができる。たとえ繰り上げ返済ができずに支払利息の総額がふくらんだとしても、途中で返済を続けることができずに家を手放すよりもずっとましだ。

プロのファイナンシャルプランナーの面談であれば、ここまで書いたようなことも踏まえたアドバイスができるだろう。だが、面談とは違って、書籍や雑誌、新聞、ウェブサイトでは一般的な話しかできないし、字数の制約もあることから物事の一面しか伝えられないことがある。たとえ著名なファイナンシャルプランナーが書いたことであっても、そのまま自分に適用できるとは限らないことに注意してほしい。

だから、駆け出しのファイナンシャルプランナーが書いたこの一文に対して、「フラット35では100万円以上でしか繰り上げ返済できない」とか「保証料が外枠の住宅ローンを忘れている」とか細かいつっこみは勘弁してください。



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