2012年07月01日

「フリーランスは毎年人間ドックを受けるべき」は本当か?

「フリーランスは体が資本。だから、人間ドックは受けるべき」という意見をよく聞きます。経済的に余裕があるなら受けた方が良いのでしょうが、20代や30代ではわざわざ高額な人間ドックを受ける必要はないのではないかと考えています。自治体が実施している健康診断、もしくは献血のサービスとして受けられる血液検査でも十分かもしれません。

検診を受けない医師も少なくない?

昨年に私の父が肺ガンと診断されて依頼、医者と会う機会があるたびに「先生はどの程度のガン検診を受けていますか?」と聞くようになりました。「ガン検診を受けるべきですか?」ではなく、「自分でガン検診を受けていますか?」と聞くところがポイントです。PETを使うような高度なガン検診を受けている医者が多いのかと想像していましたが、意外にもそうした医師は少ないようです。サンプル数は少ないので一般化はできませんが、ガン検診自体を受けていない方もいました。

私の父の主治医もガン検診を受けないと答えた一人です。その理由を聞いてみると、「検診自体が大きなストレスになる」「何らかの症状があらわれてからの検査でもいいと思っている」とのこと。先生は「これは私の考え方ですから」と強調されていました。人によっては「検診を受けた方がすっきりする」と感じるかもしれません。

さらに「私の父みたいに見つかったときはもう手遅れなんてこともあるのでは?」と聞いてみると、「ずいぶん前から血痰が出てたみたい。そのときに検査をしていれば違ったかも」という答え。父は同時期に受けた肺ガン検診ではガンが見つからなかったため、血痰が出たことを「大したことではない」と考えて医師にも伝えていなかったようです。

30代以下は病気にかかるリスクが小さい

ガンの実態を知る上で参考になるのが、がん研究振興財団による「がんの統計」です(http://www.fpcr.or.jp/publication/statistics.html)。この中で「累積がん罹患・死亡リスク」という表があります(http://www.fpcr.or.jp/pdf/statistics/fig09.pdf)。

30代以下の男性では、何らかのガンに罹患する割合は0.9%です。この割合が急上昇するのは50代以降であり、60代では19.1%、70代では37.0%にもなります。「30代以下は100人に1人未満」という数字をどう判断するかは人によって違うでしょうが、私はあまり心配するほどの数字ではないと見ました。むしろ60代、70代の数字の大きさに驚いています。

一方、女性は30代以下の罹患率が1.9%と大きく、男性の2倍以上です。これは乳ガンや子宮ガン、卵巣ガンなど女性特有のガンが比較的多いため(その結果、一般的にはガン保険や医療保険の保険料は男性の方が高いのですが、30代だと女性の方が高くなることもあります)。

ここまでガンにしぼって話をしてきましたが、ガンの他にも心疾患や脳卒中など深刻な病気があります。これもガンと傾向は似ていて、年齢が上がるほどリスクが高くなっていきます。30代以下では家族性の高脂血症であるとか、糖尿病をわずらっているような人をのぞいて、シビアに考えることもないと思います。

病気の実態を把握するには、厚生労働省が実施している「患者調査」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)が参考になります。ガンの統計値と違って年齢区分が大ざっぱなのですが、心疾患や脳卒中の患者数は65歳以上がやはり多く、15~34歳はほとんどゼロに近い数字です。

人間ドックよりも先にすべきことがたくさんある

以上が「30代以下の場合、毎年高額の人間ドックを受ける必要はない」と考える理由です。健康診断を否定するわけではありません。「小さいリスクについて多額の費用(および時間)をかける価値があるのか」を考えた上で、それでも必要だと思えるなら受ければいいと思います。リスクが小さいとは言ってもゼロではないので、受けた方がスッキリするのであれば受けた方がいいでしょう。

40代以降でも考え方は同じです。私が受けているのは、自治体が実施している特定健診(いわゆるメタボ健診)とガン検診(肺ガンと大腸ガン)だけです。自費の人間ドックを受診するかはかなり悩みましたが、今のところは受診していません。10万円近い費用がもったいないのもありますし、検査自体にもリスクがあるためです(特に内視鏡)。

その代わりというわけでもありませんが、普段から体の調子をよく観察して、異変があれば早めに医療機関に相談する。また、暴飲暴食を避けるのはもちろん、バランスのとれた食事や規則的な生活をおくるように心がけています。

しかし、健康に生きるためにもっとも重要なポイントはおそらく、ストレスを減らすことでしょう。フリーランスにとっては仕事のやり方を見直すことも、健康を維持する上で避けて通ることはできないのかもしれません。

なお、歯科検診だけは自費であっても20代から受けるべきだと思います。怖いのは虫歯ではなく「歯周病」です。歯周病は自覚症状がないうちに進行し、気がついたときは歯を支える骨が減っていたなんてこともあります。もし私が20年前に戻ることができるなら、「歯が痛くなくても定期的(半年から一年に一度)に歯医者に行って、歯石を除去してもらえ」とそのときの自分に言いたいです。


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