2012年10月31日

確定拠出年金の老齢給付金は受け取り方を間違えると多額の税金がかかる

個人型 確定拠出年金(以下、「DC」と略します)の加入者は60歳を過ぎると老齢給付金を受け取ることができます。国民年金とは違って受け取り方を指定できるのがDCの特徴であり、一時金としてまとめて受け取ってもいいし、年金として分割して受け取ることも可能です。年金は5年から20年の間で受取期間を選べる他、一時金と年金を組み合わせてもかまいません。

一時金や年金を受け取るタイミングも選べます。60歳でもらってもいいし、すぐに資金が必要でないなら70歳まで受け取りを遅らせることもできます。ただし、加入期間が10年に満たないときは、受け取りの年齢が最大65歳まで遅れることがあります。

このように受け取り方を自由に選べるのが魅力のDCでありますが、受け取り方によって税金や健康保険料が違ってくるところに注意が必要です。どちらの方法で受け取っても、受取額に応じて所得税や住民税がかかるほか、国民健康保険の保険料もかかってきます。

一時金は退職金と同じく税金が優遇されている

しかし、年金と一時金では税金の計算方法が異なるため、受け取り方によって負担には大きな差が生じます。

どちらで受け取る方がおトクなのか? 年金資産の大きさや他の収入の額によって違ってきますが、一時金で受け取った方が負担が小さくなることが多いようです。一時金は「退職所得」として取り扱われ、税負担について特に優遇されているのです。一時金の受取額から「退職所得控除」の額を引き、その2分の1が課税所得となります。退職所得控除の計算式は次の通りで、加入期間が30年であれば1500万円までは税金がかかりません(http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1420.htm)。

退職所得として課税される額
(退職金-退職所得控除)÷2

退職所得控除の計算方法
20年以下    40万円×勤続年数 (※)80万円に満たない場合には、80万円
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)


フリーランスにとって面倒なのが、小規模企業共済(以下、「共済」と略します)にも同時に加入していたときの受け取り方です。共済も受け取り方を「年金」「一時金」「併用」の3つから選べます。税金の扱いもDCと同じであり、一時金として受け取るときは「退職所得」として税金を計算します。

DCと共済の受取順で税金の額が変わる

問題なのは共済とDCの一時金を受け取るタイミングによっては、「退職所得控除」の額が小さくなってしまい、多額の税金が発生する恐れがあるところです。

たとえば、共済とDCに40歳時に加入し、60歳時(加入期間20年)にそれぞれ1000万円の一時金を受け取れるとします。受取額は合計で2000万円ですが、退職所得控除は800万円(=40万円×20年)しかありません。そのために600万円(=(2000万円-800万円)÷2)が退職所得として課税されることになります。この額に対して所得税や住民税、国民健康保険の保険料がかかります。

共済とDCで受け取るタイミングをずらすとどうなるのか? たとえば、DCは60歳(加入期間20年)で受け取り、共済は65歳(加入期間25年)で受け取るとすれば、退職所得控除は800万円(DC、=40万円×20年)、1150万円(共済、=40万円×20年+70万円×5年)となります。60歳時に受け取るDCの一時金については、100万円(=(1000万円-800万円)÷2)が退職所得として課税されることになります。共済については、65歳時の一時金が退職所得控除の1150万円以下であれば税金はかかりません。

要するに共済とDCを同時に受け取ると、「退職所得控除」が小さくなるため、多額の税金が発生します。特に一時金の額が大きいときは、支払うべき税金(および国民健康保険)は数百万円にもなる可能性があります。「どうしてもまとまったお金が必要だ」という場合をのぞき、受け取り時期はずらした方がいいでしょう。

ところが、ただ受け取り時期をずらせばいいわけではありません。退職所得控除をすべて認めてもらうためには次の条件を満たす必要があります。

・DCと共済の受け取り時期は5年以上ずらす
・共済とDCの受け取る順番に注意する

受け取り時期は5年以上ずらしてください。4年以内に退職所得があった場合、2回目の退職所得控除を計算するとき、1回目の退職所得との重複期間が計算から除かれます。たとえば、40歳で共済とDCに加入し、60歳でDCを受け取り、63歳で共済を受け取ったら、共済の退職所得控除は3年分(120万円)しか認められないのです。

もし共済の一時金を先に、DCの一時金を後に受け取る場合、受け取り時期は15年以上ずらす必要があります。共済を60歳、DCを65歳で受け取ったとすれば、DCの退職所得控除は5年分(200万円)しか認められません。どうしてDCだけ不利な扱いを受けるのかと言えば、DCは受給資格が発生してから10年間は請求権があるためです。

こうした制限を考えると次のような戦略が考えられます。
(1)共済はすべて一時金で受け取り、DCはそのときの状況を見ながら一時金と年金の併用で受け取る。年金にも控除があるので、一定額以下であれば税金や健康保険料はかからない。
(2)DCの一時金を受け取り、その5年後に共済の一時金を受け取る。5年間は共済の掛金を下限まで下げておく

ただし、これらは現在の税制が継続した場合の話であって、自分が受給するときは税制が変わっている可能性があります。だから、現役世代のフリーランスであれば、現時点では「受け取り方に注意しなければならないんだ」と頭のすみにとどめておくだけでもかまいません。



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