2012年12月11日

フリーランスのライターを目指す人に知っておいて欲しいこと

フリーライターになりたい人がどれくらいいるのか。ふたたびイケダハヤト氏のネタになりますが、「未経験からフリーランスライターになる方法」(http://blogos.com/article/51787/)という記事を見かけたので、フリーライター歴13年の立場からコメントします。

好きなことだけ書いていては生活できない

フリーライターには大きく分けて2つの種類があると私は考えています。ひとつは「自分の書きたいことを書く人」、もうひとつは「注文を受けてその通りに書く人」です。もちろん2つにきれいに分かれるわけではなく、大部分のフリーライターはその中間に位置して、そのときどきで右に左に行きつ戻りつしながら仕事をしています。

私の場合、「注文を受けてその通りに書く人」に近い側で仕事をしているフリーライターです。ほぼすべての仕事は編集部からの依頼によるもので、自分の方から企画を持ち込むということはありません。「何かいいアイディアありませんか」と編集部から相談を受けて、「こういうネタはどうでしょう」と提案することはあります。自分から動かなくても依頼だけで生活できるだけの売上があるので、「まあ、それでいいか」と流されるまま仕事をしているというかんじです。

私が「仕事はライターです。雑誌に記事を書いたりしています」と自己紹介すると、多くの人が「作家」みたいなイメージを持つようです。サザエさんの隣に住んでいる伊佐坂先生を思い浮かべるのでしょうか。実際は「作家」とはまったく違います。むしろ大田区の町工場でネジを作る「職人」に近いと自分では思っています。

自分の書きたいことを書いているライターもいます。しかし、完全に自分の書きたいことだけで生計を立てられるフリーライターってどれくらいいるんでしょうね。私の周りにはそんな人がいないのでよく分かりません。

正直なところ、興味のないテーマについて書くときはつらいです。「適当に書けばいい」と流せることができればいいんですが、職業倫理とでもいうのでしょうか、引き受けたからには一定以上の品質で納品したいと考えてしまいます。

また、注文を受けて書くからには自分の考えに反することを書かなければならないこともありますし、どう考えてもおかしい変更の指示を受けることもあります。広告の仕事であれば原則としてクライアントの指示通りにやるしかなく、ライターがどうこう言う余地はありません。

これからフリーライターになりたいと思っている方がいるとすれば、フリーライターになってどんな仕事をしたいのかをよく考えてほしいところです。

ちなみに「フリーライターは貧乏」というのも間違った思い込みです。私はフリーライターのかせぎで池袋の近くに一戸建ての家を買いました(住宅ローンはまだ払い続けていますけど)。また、私の知っている範囲に限っても、消費税を納税しているフリーライターが複数名います(要するに売上が年1000万円超)。ベストセラー作家でなくても文筆活動一本で生活することはできます。

フリーライターは目指してなるものではない

私は未経験からいきなりフリーライターになったのではなく、まずは出版社のアルバイトから正社員になって、しばらく雑誌の編集をやっていました。その後、出版社をやめて編集プロダクションに転職し、そこでは出版社の下請けで雑誌や書籍を作るだけでなく、広告やパンフレットなどの制作もやっていました。

編集プロダクションをやめてフリーライターになったのは30歳のころです。特にフリーライターになりたいと考えてやめたわけではなく、とにかく当時の職場を抜けたいという思いが強くありました。そして、なんとなくフリーライターの仕事をしているうちに10年以上がたちました。

自分から営業活動をすることもなく、依頼だけでやっていけるのは、まず出版社や編集プロダクションで知り合った方々のおかげです。そのうちに「××社の××さんから紹介された」「××誌の記事を見た」といったつながりで仕事が増えてきました。

もう一つ、仕事に困らない理由として、編集の経験があると思います。要するに発注する側として何を求めているのかがよく分かるので、細かい注文がなくても求められるものを出せるんですね。

たとえば、ライターには文章能力が必要なように思われていますけど、それはけっしてうまい文章を書く技術ではありません。論理的で意味明晰でさえあれば合格です。文学作品ではないので凝った言い回しなんて求められていません。さっと読んで内容がすっと頭の中に入ってくるのが良い文章です。

また、ライターに求められるのは締め切りを守ること。編集者にとっては原稿がなかなか送られてこないのが最大のストレスですから、スケジュール通りに原稿を書き上げる。完璧な文章で締め切りに遅れるより、ちょっと文章が荒れていても締め切りに間に合わせた方が喜ばれます。このあたりのバランスも編集サイドの経験があるとよく分かると思います。

基本的なスタンスは、編集部が作りたいものを作れるようにライターの立場でベストを尽くすこと。雑誌は編集部のものなので、ライターの名前は出るけれど編集部の意向に沿って書きます。書籍はいろいろですが、注文を受けて書くときは注文通りにやります。広告は言うまでもありません。

そういうわけで、「テーマは何でもいいので書くのが好き」な人であれば、いきなりフリーライターを目指すのでなく、まずは出版社や編集プロダクションに勤めることをおすすめします。そこで何年か仕事をした上で、フリーライターになるかどうかを決めればいいと思います。

また、「このテーマについて書きたい」と具体的な目標があるなら、他の仕事をしながら書いてもいいのではないでしょうか。そのテーマについて書き続けて、それだけで生活できることが分かったところでライター専業になればいい。

フリーライターというのは最初から目指してなるものではなく、「気が付いたらフリーライターになっていた」というものだと思うんですよね。



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