2012年10月27日

確定拠出年金の運営管理機関を変更するには

私が個人型の確定拠出年金に加入したのは4年くらい前のこと。その時点では、信託報酬が安い投資信託を取りそろえていた岡三を運営管理機関として選びました。しかし、その後にいくつかの金融機関が確定拠出年金の扱いを開始し、もっと低コストの投資信託を選べるようになっています。

確定拠出年金の運営管理機関は加入後も変更することができます。運用資産の残高も増えてきたので、低コストの投資信託を用意する運営管理機関に思い切って移換することにしました。移換先は琉球銀行です。

運用資産が200万円の場合、信託報酬が0.2%下がるだけで、運用資産の残高は年4000円は違ってきます(理屈の上では)。これからも毎月掛金を払い込んで残高は増えていくわけで、それが10年以上も続くわけですから、信託報酬のわずかな差であってもリタイア時には数万円から数十万円という違いになりそうです。

移換の手続きはとても簡単

まずは移換先の運営管理機関に電話をして、「すでに個人型確定拠出年金に加入しているけれど、運営管理機関を移換したい」と言って必要書類を取り寄せます(近ごろはウェブで書類の取り寄せができるところも増えているようです)。新規加入とは記入すべき書類が違うので、「個人型から個人型への移換」ときちんと言わないと必要な書類が手に入らないかもしれません。

送られてきた書類に必要事項を記入して返送すれば手続きは完了です。記入するのは「運営管理機関変更届」と「配分指定書」の2つだけ。「変更届」は基礎年金番号と名前、住所などを記入し、現在と変更後の運営管理機関の名前を書くだけ。「配分指定書」は移換先で購入する金融商品の配分割合を記入します。

掛金は銀行口座からの引き落としになっていると思いますが、これは移換先にもそのまま引き継がれるので、あらためて銀行関連の手続きをする必要はありません。書類が手元にあって、配分割合が決まっているなら、記入に10分もかかりません。

現在の運営管理機関に帯する連絡や手続きは不要です。また、移換には2700円の手数料がかかります。

資産は現金化してから移換される

琉球銀行の場合、移換などの手続きは毎月15日が締め切りです。たとえば、11月15日までの書類が到着すれば、翌月末の引き落としから新しい運営管理機関で金融商品を購入することになります。11月末は現在の運営管理機関で購入されます。

変更届が受け付けられると、現在の運用資産はいったんすべて売却されて現金化されます。その上で新しい運営管理機関へと移るのですが、琉球銀行の場合は定期預金として受け入れるとのこと。その後、希望する金融商品にスイッチします。

ちょっと怖いのが、資産の売却から移換が完了して、移換先でスイッチできるようになるまで、1~2カ月のタイムラグがあるところです。その間にもし株価が大幅に上昇するようなことがあったら、投資信託を安値で売って高値で買うことになります。もちろん反対に株価が下落する可能性もあり、その場合は高値で売って安値で買うことになります。

私はまだ届けを出したところで、実際に移換されるのはまだ先のこと。もし他に何か気づくことがあれば、またブログで報告したいと思います。



2012年10月22日

「国民年金基金」「確定拠出年金」「小規模企業共済」は老後の備えだけでなく、生命保険の補完にもなる

フリーランスが老後の生活資金を用意する手段として「国民年金基金」「確定拠出年金(DC)」「小規模企業共済」があります。この加入者が年金や共済金を受け取ることなく亡くなってしまった場合、遺族は一時金を受け取ることができます。つまり、これらの制度は自分の老後だけでなく、生命保険のように残された家族を守るためにも役立つわけです。

先日、「今、私が死んだら一時金はどれくらいになるのだろう」と調べてみたら400万円を超えることがわかりました。ちなみに基金に加入したのは10年ほど前、DCと共済はそれぞれ4年くらい前です。私は生命保険に入っていませんけど、加入しているならその内容を見直してみた方がいいかもしれません。

各制度の一時金についてもう少し詳しく見ていきます。制度ごとに受け取れる額や税金の扱いに違いがあります。

まず、「確定拠出年金」の加入者が亡くなった場合、「死亡一時金」が支払われます。死亡一時金はその時点で積み立てられた運用資産がすべて支払われます。遺族からの請求によって金融商品が売却され、現金化した上で支払われます(金融商品のまま受け取ることはできません)。この死亡一時金は「みなし相続財産」であり、生命保険金と同様に相続税の課税対象となります。

「小規模企業共済」の加入者が亡くなった場合、「共済金A」が支払われます。これは加入者が事業をやめたときに受け取る共済金と同じ額です。税法上では死亡退職金と同じ扱いであり、「みなし相続財産」として相続税が課税されます。

最後に「国民年金基金」の加入者が亡くなった場合、「遺族一時金」が支払われます。遺族一時金の額は加入時と死亡時の年齢によって決まってきます。残念ながら支払った掛金の全額が戻ってくるわけではありません(http://www.npfa.or.jp/about/system/temp.html)。現時点で遺族一時金をいくら受け取れるかは、加入している基金に問い合わせると教えてもらえます。

他の2つの制度とは異なり、国民年金基金の「遺族一時金」は非課税です。受取人は所得税や住民税、相続税などを支払う必要はありません。また、国民年金基金には「保証期間」があり(B型を除く)、年金の受給開始後であっても保証期間の未経過分については遺族一時金を受け取ることができます。

  確定拠出年金 小規模企業共済 国民年金基金
名称 死亡一時金 共済金A 遺族一時金
受取額 積み立てられた運用資産を現金化した額。運用成績では掛金を下回る可能性も 廃業時に受け取る共済金と同じ額。原則として掛金を下回ることはない 加入時と死亡時の年齢、および口数によって決まる。掛金を下回る
税金 相続税が課税される 相続税が課税される 非課税

「一時金を受け取る権利があるのは誰か?」については、相続の順位とは違っているので注意が必要。制度ごとに順位が決まっていて、先順位者をこえて一時金を請求することはできません。

しかし、確定拠出年金だけは、生命保険と同じようにあらかじめ受取人を指定できます。無指定の場合は配偶者が一時金を受け取りますが、子や父母、兄弟姉妹が受け取るように指定することも可能です。加入時の申込書には受取人を指定する欄がありませんので、運営管理機関に指定方法を問い合わせてください。



2012年09月22日

エクセルで家計簿をつけよう。データを入力するだけで自動集計もできる

9月21日の勉強会は「家計見直し」がテーマでした。家計簿を付けることで家計の実情を把握し、ムダな出費を省こうという話です。

家計簿にもいろいろありますが、私はエクセルで家計を管理しています。使い慣れたソフトの方が入力しやすいし、自分のやり方に合わせてカスタマイズできます。しかし、いろんな人にエクセル家計簿の話をしたけれど、「入力の仕方は分かるけれど、集計や分析のやり方が分からない」という方も多い。

そこで、簡単に使えるエクセル家計簿を作ってみました。このブログで公開いたしますので、ぜひお使いください。そして、「うまく動かない」「もっとこうした方が分かりやすい」「こんな分析をやりたい」など思いついたことがあればコメントやメールなどで教えてください。ご意見をもとにエクセル家計簿を改良していきたいと思います。

最大のポイントは、「費目」のカスタマイズが簡単にできるところです。自分の生活スタイルに合わせて費目を設定できます。エクセル家計簿についてはこちらのページもご覧ください(http://moneylab.ldblog.jp/archives/51805666.html)。今回公開するファイルはこのページのアイディアを発展させたものです。

エクセル家計簿は「エクセル2007」以降に対応しています。エクセル2007でサポートされた新機能を使っているので、残念ながら「エクセル2003」以前では使えません(時間があればエクセル2003でも動くようにしたいとは考えています)。

(追記:2012年9月23日)

エクセル2003でも動くようにテーブルを使わずに作り直しました。また、細かいところもいろいろ変更しています。エクセルのバージョンによってファイルが分かれています。

image エクセル2007以降
下のアイコンを右クリックして、「対象をファイルに保存」「名前を付けてリンク先を保存」を選んでください。
image エクセル2003以前
左のアイコンを右クリックして、「対象をファイルに保存」「名前を付けてリンク先を保存」を選んでください。

 

エクセル家計簿の使い方

使い方を簡単に紹介します。ファイルを開いたら、いちばん下にあるタブに注目してください。たくさんのタブが並んでいますが、このタブをクリックするとシートを切り替えることができます。

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まず見ていただきたいのが「サンプル」タブです。ここにはサンプルデータと使い方を掲載しています。エクセル家計簿には5つの表があります。

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左にある「日常の支出」「定期的な支出」に使ったお金を記入していってください。表のいちばん下の列に新しいデータを追加していきます。

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右側には入力データを集計する3つの表が並んでいます。いずれも左の表に入力するだけで自動的に計算が行われるので、右の3つの表はいじらないでください。
(1)費目ごとの合計。予算をオーバーすると数字が赤く変わります。費目は事前に「費目一覧」タブで設定して置いてください。
(2)支出の総額、および変動費/固定費/その他の合計。費目ごとに「変動費」「固定費」「その他」と分類しておくと、支出の大まかな内訳が分かります。
(3)費目以外に独自の区分で支出を集計。たとえば、我が家では私の財布から出したお金は「1」、妻が出したお金は「2」と記入しておき、それぞれいくら支出したのかが分かるようにしています。この区分が不要であれば記入しなくてもかまいません。

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まずは「費目一覧」を設定する

次に下のタブ一覧から「費目一覧」タブをクリックして開いてください。支出を分類するための費目を設定します。費目は自由に追加・削除・変更できます。どういう費目を設定するかは人それぞれだと思います。最初に入力されているのは私の分類方法なので、皆さんの実情に合わせてカスタマイズしてください。ここで設定した費目が他のすべてのシートに反映します。

費目はそれぞれ「変動費」「固定費」「その他」のいずれに属するかを設定します。また、費目ごとに月の予算を記入してください。

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月別のシートにデータを入力する

実際のデータは「1月」「2月」「3月」のタブに入力していきます。「サンプル」タブを参考にして入力していきます。日付順に入力する必要はありません。日付順でないと気持ち悪い人は、後で並べ替えることもできます。

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「集計」タブは費目別合計の推移を見ることができます。たとえば、食費が月ごとにどれくらい増減しているかが分かります。予算をオーバーした月は文字が赤く変わります。

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間違って集計表を削除しないように、シートにはロックがかかっています。自分なりにエクセル家計簿をカスタマイズしたい方は、「校閲」タブの中にある「シート保護の解除」ボタンをクリックしてください。パスワードは設定していないので、ボタンをクリックするだけでロックが外れます。

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たとえば、費目の内訳をグラフにして見たいときは、ロックを外してから「挿入」→「円」でグラフを作成します。 こんなグラフが簡単に作成できます。

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「エクセルの使い方がよく分からない」という方は、こちらの本(500円でわかるエクセル2010)がおすすめです。実は私も一部を執筆しています(住所録や顧客名簿を作るパート)。



2012年09月04日

10月19日に勉強会「フリーランスのための『確定拠出年金の始め方』を開催します

10月19日(金曜日)の午後7時から、勉強会「フリーランスのための『確定拠出年金の始め方』」を開催します。場所は池袋西口の勤労福祉会館(5F/第2和室)です。

会社員であれば厚生年金だけでも最低限の生活ならできるでしょうが、国民年金にしか加入していないフリーランスが老後にもらえるのは月6万円くらい。これだけで生活するのはまず無理でしょう。元気で働ける間に老後のための積み立てを始める必要があります。

老後資金を用意する手段として、よく知られているのが「国民年金基金」(以下、「基金」)です。しかし、基金には「インフレに弱い」という弱点があります。現時点ですでに受給できる金額が確定されているため、インフレで物価が上がれば実質的な価値が目減りしてしまうのです。

そこで10月の勉強会では「個人型確定拠出年金」を取り上げます。「日本版401K」「DC(Defined Contribution Pension)」とも呼ばれるので、以下では「DC」と表記します。基金に加えてDCにも加入することで、老後資金がインフレで目減りすることを防ぐことができます。

老後資金をもっとも確実に用意できる方法

DCでは毎月の掛け金で金融商品を積み立て購入し、60歳以降に運用高に応じた年金を受け取ります。どれだけの年金を受け取れるかが運用方法によって変わってくるのが最大の特徴です。掛け金で購入する金融商品は加入者が自ら選択します。同じ掛け金を払い続けた人でも、運用がうまければ人より多くの年金を受け取れるかもしれません。もちろん、反対に少ししか受け取れない可能性もあります。

「将来の年金の額が未確定なんて不安だ」「老後資金を危ない方法で用意すべきじゃない」と思われるかもしれません。しかし、株は基本的にインフレに強い資産です。物価が上がれば株価も上がる。だから、DCの掛け金で株を中心に運用をすれば、インフレになったときは年金資産が増える可能性が高いのです。

もちろんすべての老後資金を株で用意するのは無謀です。基金とDCを適切に組み合わせれば、デフレが続いてもインフレになっても「十分な老後資金を準備できなかった」というリスクを最小限にとどめることができます。

株価低迷で掛け金を下回る年金しか受け取れない可能性がゼロではありませんが、そのときは目減り分を「インフレに備えるための必要経費だった」と考えましょう。まあ、やり方さえ間違えなければ、年金資産が掛け金を下回る確率はごく小さいと思います。

いくつかの原則を知れば誰でも安定運用できる

明日にも加入の手続きをしたいDCですが、DCは加入の手続きが分かりにくいし、加入後の運用も難しい。そこで10月の勉強会では「DCの加入のしかた」と「DCで運用するときのポイント」を紹介します。

実際に私も基金とDCの両方に加入しているので、その経験をふまえてなるべく具体的にお話ししていきたいと考えています。「株とかまったくわからない」という方でも大丈夫です。いくつかの原則を理解するだけで誰でも簡単に安全な運用ができます。

反対にすでに株やFXをバリバリやっている方にとっては、DCを使って安全な運用とは退屈な話かもしれません。しかし、DCは節税効果もありますから、DCで最低限の老後資金を確保しておき、その残りで投機的な資産運用を楽しむというやり方もあると思います。

申し込みはこちらのページ(http://kokucheese.com/event/index/51686/)からお願いいたします。



2012年08月23日

9月21日に勉強会「フリーランスのための『家計見直しの極意』」を開催します

9月21日(金曜日)の午後7時から勉強会「「フリーランスのための『家計見直しの極意』」を開催します。場所は池袋西口の勤労福祉会館(5F/第2和室)です。

金回りが良くなっても安心できない!

会社員からフリーランスになると手元に入ってくるお金が増え、自分がお金持ちになったように感じるもの。しかし、会社員は手取りが少ないように見えても、実は会社が厚生年金の掛金を半分負担してくれているし、退職金も積み立ててくれています。さらに会社によっては厚生年金に上積みする企業年金を用意してくれているところも。フリーランスはこうした備えをすべて自分でやる必要があるため、手取りが増えたからといって油断してはいけないのです。

そうは言っても、目の前にあるお金が増えると、財布のヒモはどうしてもゆるんでしまいます。私もフリーになってから、一回り大きなアパートに引っ越したり、家具や家電を買い換えたり、ずいぶん派手にお金を使ったものです。しかし、後になって「将来への備えをするなら、実はそんな余裕はなかった」ということに気付き、今ではとっても後悔しております。国民年金基金とかあと5年早く入っておけば、毎月の掛金の額はずいぶん安くすんだはず。

フリーランスにとって家計見直しが必要なワケ

そういうわけで、9月の勉強会のテーマは「家計見直し」です。継続的にそれなりの仕事をこなすフリーランスであれば、生活費が足りなくなるほどお金に困るなんてことはないでしょう。だから、家計について無頓着になりがちです。たまに銀行口座の残高を見て、「前より減ってないから大丈夫!」で済ませている人も多いのでは?

でも、これはかなり危険な状態です。取引先が倒産して期待していた入金がないとか、景気が悪くなって仕事が減ったとか、フリーランスは前ぶれなく収入が落ち込むことがあり得ます。急に生活のレベルを落とすというのは難しく、収入が減ると家計は赤字になる可能性が高いです。また、家族の病気やケガで医療費がかさんだり、思いがけずに子どもができたり、出費の側が増えて赤字になることもあります。

こういったピンチに直面しても、普段から家計の状態をしっかり把握していれば対策をとることができます。「毎月、食費や通信費、教育費などがいくらかかっているのか」を知っていれば、「ここをこれだけ削れば乗り切れる」とすぐに対策をとれます。皆さん、月の生活費の内訳を聞かれたとき、すぐに答えられますか?

また、仕事が順調なときでも「毎月の生活費はいくら必要か」「最低限いくらで生活ができるのか」を知っていれば、心理的にかなり楽になると思います。生活のためにどれだけの仕事をすればいいのかが明確になり、「なんとなく不安だから」と無理に仕事を増やさなくてすみます。

家計簿で現状を把握し、ムダを省く

9月の勉強会では「家計簿で現状を把握する方法」「家計簿をもとに生活費のムダを省く方法」を考えていきます。

前半の「家計簿で現状を把握する方法」では、家計簿を付ける方法を具体的に紹介します。「家計簿なんて面倒」「過去に何度も挫折した」という方も多いでしょうが、最小限の労力で最大の効果を生み出す家計簿の付け方があります。目的は現状の把握なので、2~3カ月の期間限定でかまわないので家計簿を付けることをおすすめします。

後半の「家計簿をもとに生活費のムダを省く方法」では、どこにムダが生じがちで、どうすれば無理なく節約ができるのかを紹介します。節約といっても無理やガマンをするのでは長続きしないため、生活のレベルをなるべく落とさないようにしながら生活費をおさえる方法を考えたいと思います。特にフリーランスは収入が不安定なのに固定費がふくらみがちなので、ここをどう押さえ込むかがカギになります。

申し込みはこちらのページ(http://kokucheese.com/event/index/49985/)からお願いいたします。

この次の勉強会は10月19日(金曜日)の予定です。テーマは「確定拠出年金の始め方」です。申し込みページはただいま準備中ですので、もう少しお待ちください。



2012年08月20日

フリーランスをやめて会社勤めに戻ると年金はどうなる?

フリーランスにとって「国民年金基金」「個人型 確定拠出年金」「小規模企業共済」は、節税しながら老後の備えができるという強力なツールです。

しかし、将来もずっとフリーランスをやりつづけるかどうかは分かりません。もしかしたら、何年か先には会社づとめをしているかもしれないし、自分で会社を作ってその役員におさまっているかもしれません。

そんなとき基金や共済などはどういう扱いになるのか。また、何年か先に会社づとめをする可能性が高いときは、基金や共済などに加入すべきかどうか。

国民年金基金

まずは「国民年金基金」から見ていきましょう。会社員や会社役員になると、原則として「厚生年金」に加入することになります。すると「国民年金基金」の加入資格を失い、脱退することになります。

脱退時にそれまでの掛金が返ってくることはありません。60~65歳以降に加入期間と口数に応じた年金を受け取ることになります。数年で脱退したときはスズメの涙くらいの年金になるかもしれませんが、払った分は何らかの形で返ってきます。年金を受給する前に亡くなったときは、遺族に遺族一時金が支払われます。

個人型 確定拠出年金

入った会社の年金制度によって違ってきます。

会社が「企業型 確定拠出年金」の制度を用意しているなら、その会社の企業型年金に移管されます。勤め先で移管の手続きをとることになります。運営管理期間が変わることになれば、取り扱いされる金融商品も違ってきます。それまで積み立てた金融商品はいったん売却して、移管先で取り扱う金融商品を購入し直すことになります。

会社が「企業年金」を用意している場合、個人型 確定拠出年金の加入資格を失います。新たに掛金を支払うことはできませんが、年金資産(それまでの掛金で購入した金融商品)の運用を続けることはできます。そして、60歳以降に年金や一時金として受け取ることになります。なお、「期間が3年以下」「資産額が50万円以下」などの条件を満たしたときは、年金資産を脱退一時金として受け取ることを選択できます。

会社が特別な年金制度を用意していない場合(要するに厚生年金だけの場合)、引き続き個人型 確定拠出年金に加入することができます。ただし、掛金の上限は月2万3000円になります(個人事業主は月6万8000円)。

小規模企業共済

通常の会社員になるのであれば、小規模企業共済の加入資格を失います。「個人事業を廃業した場合」に該当するため、それまで払い込んだ掛金と加入期間に応じた「共済金A」を受け取ることになります。

受け取る共済金には税金がかかるところに注意してください。ただし、共済金は「退職所得」の扱いになるので、月3万円程度の掛金なら税金はほとんどかからないでしょう。月4万円を超えていたら税金がかかってくる可能性があります。それでも、加入期間中に受けた節税メリットの方がずっと大きいでしょう。

次に会社を設立してその役員になった場合です。小規模企業共済の加入資格は「商業(卸売業・小売業)、サービス業を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員」となっています。この範囲におさまるのであれば、引き続き共済に加入し続けることができます。ただし、資格変更の届出が必要です。

短期でも加入する価値はあるか

短期の加入であっても、けっして掛金が無駄になることはありません。なんらかの形で戻ってきます。

また、加入期間中は掛金がすべて所得控除の対象なので、所得税/住民税が大幅に安くなります。課税所得が500万円であれば、所得税と住民税を合わせた税率は30%です。掛金の30%分の税金が安くなるわけで、老後の生活資金を準備する手段としては最適です。

小規模企業共済については、掛金の払込期間が1年未満だと掛金を下回る額しか受け取れません。また、数年後に確実に会社勤めに戻ることが確定していて、なおかつ売り上げが少なくて節税のメリットもない場合は、わざわざ基金や共済に加入することもないでしょう(加入や脱退の手続きも面倒ですし)。こうした例外を除けば、2~3年という短期であっても加入する価値は十分にあると思います。



2012年08月14日

消費税に対する大きな誤解。「益税」は世間で考えられているほど大きな額ではない

消費税の「益税」問題について誤解が多いので一言。こちらの記事「あなたが支払った消費税は税収にはなりません。私の小遣いになります」http://blogos.com/article/44738/)の間違いを見ていきます。

ポイントは2つあります。

  1. 「純粋なギャラ」とは大きな勘違い。フリーランスのギャラには消費税が含まれている。「私は消費税を請求していません」と言っても、実際は消費税込みで処理されている。
  2. 売り上げ1000万円以下のフリーランスが消費税を受け取ったら、「その分は丸儲けになる」というのは間違い。仕入れ分が控除される他、所得税などの税額も違ってくるから、「益税」なんてほとんどない。

みなさんが近くの個人商店で買い物をしたとしよう。総額1万円の買い物をしたら、5%だったら1万500円だが、10%になったら1万1000円になる。1000円分は消費税分だ。しかしこの個人商店の年間売上高が1000万円以下なら、客からとったこの消費税は納める必要はない。堂々と合法的に消費税として客からとった金を、自分たちの所得にできるのだ。

課税売上高が1000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されます。受け取った消費税を納める必要はありません。これを「益税」と言います。これは正しい。

私が編プロに勤めていた頃、外注のデザイナーやカメラマンやライターは、消費税を請求してくる人とそうでない人がいる。

これはまったくの誤解です。どんな取引にも消費税は課税されます(一部例外を除く)。消費税分を請求書に明記しない場合、ギャラに消費税を含んだ形で請求しているということです。請求している本人は「消費税は上乗せしていない」と言い張るかもしれませんが、請求された側はそのギャラを消費税込みとして処理しています。

例えば純粋なギャラの総額が800万円だったとする。
そこで消費税5%を請求すれば40万円プラス。10%になるとなんと80万円!も所得が増えるのだ。

「私は売上高1000万円以下なので消費税はいただきません。だから800万円の『純粋なギャラ』だけを請求します」と本人は主張していても、『純粋なギャラ』というのは本人の思い込みです。

私はずっとフリーライターとして出版業界で働いてきましたが、ほとんどの取引先は消費税込みで原稿料が処理されていました。支払い明細に消費税分を明記する出版社はほとんどありません。

ギャラを支払う会社の立場になって考えてください。たくさんあるフリーランスの取引先について、それぞれ「おたくは売上高1000万円以上で消費税を支払っていますか?」なんて調査するわけにはいかないでしょう(少なくとも私は取引先からそんな調査を受けたことはありません)。取引先ごとに「ここは免税事業者、こっちは課税事業者」なんて区別をして納付税額を計算するとなったら大変なことです。

消費税を外枠で請求するか、ギャラに含めた形で請求するかは、業界の慣習や取引先との力関係で変わってくると思います。私の経験ですが、売り上げが増えて課税事業者になったとき、「今後は消費税を上乗せして欲しい」と取引先にお願いしたところ、「うちは消費税込みでやっています。請求書に消費税分を書いてもかまわないが、単価はこれまでと同じにしてください」と言われたことがあります。

そういうわけで、「私は売り上げ1000万円以下なので消費税を請求していません。私は正直者です」と本人は思っていたとしても、実際はギャラに消費税が含まれていて、形の上ではそれを着服しているのです。その是非は後で考えますが、「益税」の額は世間で思われているほど大きくありません。

でも今年からフリーになり、しかも消費税増税となれば、万が一、消費税を請求せず、年間売上高が1000万円超えてしまったら、そこから自分で消費税を5%なり10%なり、支払わなくてはならない。

多分超えないけど、どうなるかわからないから、これは恐ろしいリスクだ。ましてや1000万円以下だろうが何だろうが、請求してもいいことになっているのであれば、(というか請求しなければならない、という言い方が正しいのかも)消費税を請求した方がいいだろう。

消費税の納税義務があるかどうかは、個人事業者の場合、前々年度の売り上げによって決まります。つまり、2年前の売り上げが1000万円を超えていれば、今年の売り上げについて消費税を支払う必要があります。2年前が1000万円以下なら免税事業者です。

今年からフリーになった人は、2年前の売り上げがないわけで、初年度は消費税の支払い義務はありません。ただし、開業と廃業を繰り返すことで消費税の支払いをのがれようとする悪い人が多いため、このあたりの判定基準がちょっと変わる予定です。

だから、「今から請求する売り上げについて、消費税の支払い義務があるかどうか分からない」ということはありません。2年前の売り上げを見れば、はっきりします。

ちなみに1000万円というのは税抜きの売上高のことです。消費税込みで請求書を書いている場合(要するに消費税を意識せずに普通に請求書を書いた場合)、売り上げが1050万円を超えたところで納税の義務が発生します。1010万円とか1020万円だったら免税事業者です。微妙なラインのときは注意しましょう。

仮に100万円のギャラをもらうとする。(実際にそんなにかかるとは思えないが便宜上)あなたは私に依頼し100万円で書いてもらえると思ったのに、請求の段階になってあなたは驚くわけだ。「えっ、110万円?!100万円って言ったじゃないか!」と。でも私は事業者として消費税を請求しなければならない。5%なら5万円で済むが10%となれば10万円にもなる。10万円も増えると客も相当な負担になる。

フリーランスの側はもちろん、発注する側も消費税の知識が求められますよね。大きな金額の取引であれば、事前に消費税の取り扱いをきちんと話し合っておく必要があります。

でも法律でそう決まっているのだから仕方がないと、あなたは私に消費税10万円を払う。しかし私の年間売上高が1000万円いかなければ、あなたの払った消費税10万円は、社会保障費なんかに回されるわけもなく、国の借金返済のために回されるわけでもなく、私が10万円分、丸儲けしたことになる。こんなこと、許せるだろうか?

かりに年間の売り上げ(税抜き)が2000万円だったとします。税率10%だったら200万円を納税するわけではありません。

消費税というのは、売り上げから仕入れなどの金額を引いた残りについて税率をかけて納付税額を決めます。小売業で「売り上げは2000万円、仕入れが1900万円」であれば、100万円の10%で納税額は10万円です。もし「売り上げは2000万円、仕入れが2100万円」であれば消費税を納める必要はなく、反対に消費税が戻ってきます。

フリーランスのライターやイラストレーターなら「仕入れなんてないだろう」という話になりますが、仕事のために必要なパソコンだとかソフトだとか電話代だとか交通費だとか、必要経費にたいして消費税がかかっています。これを仕入れと同様に見なして、売り上げから引き算してから納税額を求めます。

ところが、確定申告書の「経費」の中には、消費税がかかるものやかからないものが混在しています。たとえば、家賃は消費税がかかりません。だから、小規模な事業者の場合、簡易課税制度というのが設けられていて、売り上げの一定割合を仕入れとみなして計算できます。

サービス業のみなし仕入れ率は50%ですから、年間の売り上げ(税抜き)が2000万円であれば、1000万円が仕入れとして控除されるので、残る1000万円に税率をかけて納付税額を求めます。だから、税率10%になっても納税すべき税額は100万円です。

では、売上高(税抜き)1000万円のフリーランスを考えてみます。本来納付すべき消費税の額は、「みなし仕入れ率50%、税率10%」の場合で50万円です。しかし、売り上げ1000万円以下だと免税事業者なので、50万円は益税となります。

「益税はけしからん。私はちゃんと申告して払うべき税額を支払います」という場合、実際の負担はどうなのか。個人事業主として支払った消費税は損金として経費と同じように処理できます。ということは、事業所得が50万円減るということで、それに応じて所得税や住民税、国民健康保険料が安くなります。所得控除や住所によって負担が違ってきますが、おそらく50万円所得が減ると、税/保険料の負担は20~25万円は減るでしょう。

ということは、1000万円のフリーランスであっても、実質的な「益税」の額というのは25~30万円くらいだと思います。現在の税率5%であればその半分と見ていいでしょう。10万円をちょっと超えるくらいです。みなし仕入れ率がもっとも低いサービス業でこの数字ですから、みなし仕入れ率80%の小売業であれば「益税」なんて雀の涙ほどの額です。

1000万円を境にして納税義務を免除した理由は、事務作業の負担を軽減するためです。徴税コストもかかるわけですし、どこかで免税のラインを作らなければなりません。1000万円という水準はフリーランスの立場から見ると高いように見えますが、実質的な「益税」の額から考えると十分納得できる程度だと私は思います。

しかし、今後税率が15%、20%と上がっていくなら、無視できないレベルになるかもしれません。私は消費税のあり方を全面的に見直して、インボイス方式に移行すべきだと考えています。

サラリーマンが消費税増税から自衛するには、会社の正社員ではなくフリーランスの契約に切り替えれば、毎回給料に消費税分10%を請求できることになる。そうすればこの先、消費税が20%になったとしても、給料も20%増えるということか。

給与には消費税はかかりません。ですから、税率が上がってももらえる額は増えません。

フリーランス契約に切り替えた場合、当然のこと消費税を請求できるでしょうが、取引先との力関係がありますから、実質的な収入が増えるかどうかはわかりません。また、フリーランスとなれば会社員のときに受けられた手厚い保護がすべてなくなってしまうわけで、会社員のときにもらっていた給与の最低でも2倍はもらわないと割に合いません。そういう条件闘争ができる人でないとフリーランスになるのはやめた方がいいと思います。

切りがないので今日はここまで。長い記事を最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。私は税理士ではないので、もし誤解や間違いがあったらご指摘くださいm(_ _)m

マンガと図解 新くらしの税金百科〈2011‐2012〉 マンガと図解 新くらしの税金百科〈2011‐2012〉
財団法人納税協会連合会

清文社 2011-08-03

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